アート・ドキュメンテーション学会 2012年度年次大会

■ アート・ドキュメンテーション学会 2012年度年次大会
「デジタル時代のアート・アーキビスト―教育と現場―」

今回のJADS大会は、最近リニューアルの成った日本大学藝術学部江古田校舎を会場として開催します。

近年、美術やパフォーマンスなど広義のアートに関するアーカイヴズ構築の必要性に対する社会的な認知は次第に進み、2010年には政府の文化審議会による報告でも「文化芸術分野のアーカイブ構築」が重点的に取り組むべき施策の一つとして、取り上げられるに至りました。これはJADSを含む多くの関係者の実践とはたらきかけの結果で、よろこばしいことです。その一方で、JADSの中では、このようなアーカイヴズを担って行くべき次世代人材の育成とそのキャリア支援の具体的な議論が行われてきました。デジタル技術の持つ社会的、学術的、そして、芸術的な意味の改変が大きなうねりとなっており、時代の要請に対応して、学芸員資格認定制度の改訂が行われ、また関連学会でも、アーキビスト認定の議論が立ち上がってきています。昨今の厳しい社会状況を見据えると、大学という教育の現場で資格認定の問題は、卒業生の将来にとって重要な問題でもあります。

本シンポジウムでは、その必要性が加速度を増しているともいえるデジタル技術と芸術についての基礎教養と公的な資格のありかたについて提起・議論を行うとともに、教育の成果をどのようにして有効にアーカイヴズ構築の現場に反映してゆくかについて、現在、文化庁が支援するプロジェクトとして進行中の「写真原板アーカイブ」を一つの素材に、意見を交えてゆきたいと考えます。会場校は、写真、映像、デザイン、アート・ドキュメンテーション、人文学を含む総合芸術学部であり、デジタル・アーカイヴズ作成の教育経験を加味することも期待されます。

JADSに集い、あるいは、これから、JADSに参集していただくこととなる、未来のデジタル・アート・アーキビストを育てる、というためにも、多くの方のご参集と活発な論議をお願いいたします。

日程:2012年6月9日(土)、10日(日)
主催:アート・ドキュメンテーション学会 
協力:日本大学藝術学部・共同研究「アート•アーカイブ構築についての基礎研究」グループ
後援:情報知識学会、日本ミュージアム・マネージメント学会、記録管理学会、日本アーカイブズ学会、情報処理学会CH研究会
会場:日本大学藝術学部 江古田校舎 E-301(東棟)
http://www.art.nihon-u.ac.jp/access/
年次大会参加費:会員1,000円(学生会員500円)、非会員2,000円(学生1,000円)
*参加費は当日いただきます。
*後援学会会員は会員価格でご参加いただけます。
*日本大学芸術学部、教職員、並びに、学生、大学院生は、年次大会参加費は無料です。

○参加申し込み:下記フォームをご利用ください。
[参加申込みフォーム] http://bit.ly/JADS2012
○ハガキでお申込み済みで、図書館見学会参加ご希望の会員は下記フォームをご利用ください。
[図書館見学会追加申込フォーム] http://bit.ly/JADS2012lib

お問い合わせ:〒166-8532 東京都杉並区和田3-30-22 
大学生協学会支援センター内 アート・ドキュメンテーション学会事務局
TEL:03-5307-1175 FAX:03-5307-1196 E-mail: jads■univcoop.or.jp
*電話での応答は「大学生協学会支援センターです」となります。

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【第1日目】 6月9日(土)  見学会・シンポジウム

12:00 芸術学部図書館見学会
●図書見学受付開始:11:30〜12:00
●集合場所:日芸図書館入口(西棟4F)
※図書館見学は12:00〜12:40を予定としております。
*図書館は見学会終了後もご覧いただけます。
13:00 開会、開催趣旨説明

シンポジウム 「デジタル時代のアート・アーキビスト―教育と現場―」

モデレーター:田良島哲(東京国立博物館)

報告1 細谷誠(日本大学芸術学部デザイン学科)
「新しいものづくりのためのプロセスアーカイブシステム」

デジタルファブリケーション環境の登場を背景とした新しいものづくりの時代の中で、デザインの成果物だけではなく、デザインワークショップ・デザインプロセスのアーカイブに着目し研究開発を進める「Generative Idea Flow(G-I-F)」の活動について報告する。G-I-Fによるデザインワークショップ、プロセスアーカイブシステムを紹介し、新しいものづくり、新しいデザイン教育に適応するデジタルアーカイブを提案する。

報告2 谷口知司(京都橘大学、日本デジタル・アーキビスト資格認定機構)
「デジタル・アーカイブのための専門職の養成」

デジタルアーカイブなどの、資料や文化活動の情報化の担当者には、ICT技術を基盤とし、情報の価値が評価できる素養と、何をどのように記録・管理・流通するかを判断する能力、さらに知的財産権、肖像権やプライバシーなどへの対処ができる知識と能力が要求されている。こうした社会の情報化の進展に伴って新たに必要とされるに至った人材の育成について、その養成カリキュラムや資格認定制度のあり方について提言する。

報告3 松本徳彦(写真家、日本写真家協会)/中川裕美(日本写真家協会、日本写真保存センター)
「写真原板アーカイブの構築―意義と実践」

写真原板の収集・保存から利活用へ、をテーマに、1、なぜ写真原板の保存が必要か アーカイブとしての日本写真保存センターの役割 2、写真原板の劣化はなぜ起こるか 3、写真原板を長期に保存するには 4、収集した写真原板のデータベースの必要性 5、データベースの公開と利活用について 6、権利処理を簡便に行うには 7、写真原板の修復と保存 8、データベース構築にかかわる専門家の育成 の項目について、現状認識と対応策、将来像について講演する。

コメンテーター:金子啓明(興福寺国宝館館長、日本大学芸術学部客員教授)/木村三郎(日本大学芸術学部教授)

討論:報告者+金子隆一(予定・東京都写真美術館専門調査員)

野上紘子記念アート・ドキュメンテーション学会賞・推進賞授賞式
17:00 開会
17:40 閉会

終了後 懇親会
会場:ダブリナーズ アイリッシュパブ 池袋店

http://www.dubliners.jp/ikebukuro/

懇親会費:5000円(学生3000円)

【第2日目】 6月10日(日) 研究発表会・総会
9:30 開会

発表1 打林俊
「日本大学デジタルミュージアム所収『フランス19世紀同時代人ギャラリー』について
― デジタル・アーカイヴと写真史研究の視点から」
日本大学では、デジタル・アーカイヴへの取り組みとして、〈日本大学デジタルミュージアム〉をウェブ公開している。芸術学部は、本年3月に『フランス19世紀同時代人ギャラリ― Galerie contemporaine』を同デジタルミュージアムのコンテンツとして公開した。本発表では、この『フランス19世紀同時代人ギャラリー』の資料価値と、写真史の立場からの史的位置づけを明らかにした上で、デジタル・アーカイヴとして公開することの意義を提示したい。

発表2 関紀子
「東京国立博物館収蔵品にみる清朝末期に撮影された中国写真について」
明治26年に岡倉天心によって行われた中国における文化財調査を嚆矢として、伊東忠太や早崎■吉、関野貞らが中国各地で調査を行った。これらの調査の特徴の一つとして、写真技術を有効な手段として用いたことがあげられる。平成22年に東京国立博物館では館蔵品をもとに、特集陳列「清朝末期の光景―小川一眞・早崎■吉・関野貞が撮影した中国写真―」を開催した。本発表ではこの展示の成果として、黎明期における訪中調査で撮影された写真資料を紹介する。(※■は、「禾」に「更」の漢字。)

発表3 安室可奈子
「リヨン市立図書館寄託イエズス会コレクションについて」
リヨン市立図書館に寄託されているイエズス会コレクションは、グーテンベルク聖書を始め10万点の版画や画像等、神学に関わる貴重な資料の他、百科全書性を兼ね備えた貴重なコレクションである。フランス国立図書館のレゼルヴと比較してもアクセスが容易であり、またデジタル・アーカイブ化も積極的に進められている。本発表は、美術史研究の立場から、このコレクションの概要や代表的な貴重資料を紹介するものである。

発表4 向井知子
「美術情報データベースから「経験」をデザインする ― 雪舟の見た風景を探る ― 」
データベースを「検索する」ことで芸術資料を知るという体験は、美術史など学問の文脈から芸術資料を知る体験とどのように違うのか。おそらく、使用者の利用目的や個人的関心から芸術資料にアクセスできるということが魅力であろう。展示デザインやワークショップを例に、この特性に着目し、実際にデータベースを利用しながら、芸術資料をめぐる「経験」をデザインするという方法論について探る。

12:00 研究会終了(予定):昼食
13:30 総会
15:00 閉会

【同時開催】
6月9日(土)は、芸術資料館 (西棟3F)で13:00まで
オリジナルプリント展
「銀塩黒白ファインプリントの名作」(入場無料)を開催しております。ご覧ください。

 

※大会・総会については、開催まで随時 本ウェブサイトを更新してまいります。ご注目ください。

※2012-06-01 更新