2007年度年次大会 シンポジウム「発現するドキュメンテーション 蓄積と検索から表現へ」

■開催記録

>>予稿集 >>写真  >>動画PressRelease


■開催概要

2007.06.21更新

*一部のご案内で、会員以外の方の申し込み期限を「5/31まで」と記載しておりますが、【6/15まで】とします
*参加申込多数につき座席数の都合で、23日公募研究発表会の会場が【講堂】に変更となりました。

>>参加申込 >>PressRelease

アート・ドキュメンテーション学会2007年度年次大会
2007 Annual Conference of JADS: Japan Art Documentation Society

シンポジウム
発現するドキュメンテーション 蓄積と検索から表現へ
Documentation as apparition: from storage and retrieval to 'expression'

主催:アート・ドキュメンテーション学会/国立新美術館

23日(土)シンポジウム[第53回研究会] 講堂
24日(日)公募研究発表会[第54回研究会] 研修室 講堂
      第18回(2007年度)総会 研修室
      国立新美術館情報資料関連施設見学会

収集し組織化してクエリー(query、問い合わせ)を待つ、クエリーが投げかけられなければ、動かない:動き出さないデータベース、ではなく、集積され組織化されるもの、それ自体:総体が、自ら発現し表現をめざすようなドキュメンテーション。観る者が、集積の個々と全体を把握しつつ感応できるようなドキュメンテーション、は可能か、意味はあるか。2007年1月誕生の5番目の国立美術館、国立新美術館において、アート・ドキュメンテーションのあらたな可能性に向けて「発現(apparition)」をキーワードにシンポジウムを開催いたします。

2007年6月23日(土)
13:30-17:30[開場13:00] 講堂

13:30 主催者挨拶:国立新美術館 館長 林田英樹
     アート・ドキュメンテーション学会 会長 高山正也
シンポジウム 発現するドキュメンテーション 蓄積と検索から表現へ [JADS第53回研究会]
13:45 イントロダクション/水谷長志:独立行政法人国立美術館情報企画室長

14:00 安斎 利洋:システムアーティスト
「カンブリアンゲーム──作動するテクスト」
1990年代、私(安斎)と中村理恵子は、複数の作者による対話的な創作形式である連画の実験を行ってきました。それは、作者の牙城の中で生成される絵画という作品形式を、テクストという開いた織物の中に解き放つ運動でもありました。  今日、インターネット上のウェブ、ブログ、ソーシャルネットなどが日常に浸透するなか、テクストは発生したその場で人々の反応にさらされ、即時的に作動を開始するのが常態となりつつあります。テクストは記述し終わったデータではなく、書き換えの連鎖を引き起こすリンクしあった機械群として、その本質を拡張しはじめています。  私たちは現在、作動するテクストである「カンブリアン・ゲーム」という創作形式を考案し、インターネット上のセッションやワークショップで活動を展開しています。それはテクストの未来を予見する、プロトタイプであると考えています。

14:30 前田富士男:慶應義塾大学文学部教授、同大学アート・センター所長
「メタファーとカップリング──アート・アーカイヴにおける時空間」
美術作品・造形資料は、絵画・写真・画像から、彫刻・工芸・環境デザインに、また庭園や建築を包括する。ごく単純に、絵画と彫刻とを比較してみよう。このふたつの表現領域は、線・明暗・色彩からなる平面作品と、塊量・面からなる立体作品として、およそ異なったオーダーをもつ。さらに、内部空間をもち、そこでの行動を前提とする立体作品としての建築を想起してもよい。ひとくちに「造形作品」といっても、これらのオーダー、本質的に異なったオーダーは、本来、共通項でくくることなどできないのかもしれない。われわれのごく当たり前の感性の働きを思いおこしても、絵画を前にするときと、彫刻にふれているとき、あるいは建築の中にいるとき、われわれは自由自在に感性の作動を組み替えているといってよい。まして、造形資料に関する「研究」や「情報」とは言語メディアにもとづく表現である。線・明暗・色彩・塊量・内部空間といった感性的対象のゆたかな内実に比して、言語とはおそろしく別様なメディアでしかない。とうてい造形資料の諸オーダーがもつ多岐多様な表情をとりおさえきれない。 むろん、諸オーダーやメディアの優劣が問題なのではない。諸オーダー/メディアにまたがる共通項を、制作者・作品名・制作年といった指標に、あるいは、高精細度の画像に、といったコンテクスト化に求めることはいったんストップしてみよう。それでもなお、相異なったオーダー/メディアを「相即的(koharent)」に接続する道筋がありうる。それをカップリングと呼ぶ。カップリングやメタファーの視点から、造形資料や言語メディアを再把握することが、「発現」へむかうひとつの方途である。

15:00 丸川 雄三:国立情報学研究所特任准教授、独立行政法人国立美術館情報企画室客員研究員
「連想がつなぐ文化財の情報発信」
本講演では,これまでに私がシステム構築に携わった文化財情報発信の事例をいくつか紹介いたします。 「文化遺産オンライン」は文書と文書のつながりを単語の重なり度合によって計算する「連想計算」を用いて,ユーザーが自分の興味や目的に応じて文化財を探すことができる連想検索サービスです。「国立美術館・遊歩館」は国立美術館4館総合目録の情報をテーマ別に画像とともに紹介する仮想リーフレットです。「想・IMAGINE」は複数のデータベースを同時に連想検索できる連想検索統合サービスの総称です。このうち文化財情報を中心とした発信事例について紹介いたします。  文化財の価値はそこに在るだけでは完結せず,受け手が存在して初めて成立するものだと思います。そのような文物の情報発信にあたっては,受け手側が自由な切り口で作品に触れられること,また多様なとらえ方ができることが重要だと考えています。

15:30 金子 郁容:慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授、同大学湘南藤沢メディアセンター所長
「想起する街−図書街プロジェクト」
人類の知的・文化的活動の資産は世界中に分散的に存在しています。ネット上にオープンな「知の編集空間」を構築して、それらを結びつけ、関連づけるのが図書街です。ICTの多様な展開に向けて、新しいデータモデルや連想技術を開発し、ユニバーサル・コミュニケーションを促進することを目指します。このプロジェクトでは、「書物」をあらゆる情報の基本単位ととらえます。しかし、図書街は、電子図書館ではありません。「本棚」が「道」「界隈」「広場」など、直観的な街オブジェクトを使って、書物のもつ多義的な関係性を自 由に編集して、文脈をもった関係空間を作るということです。道に沿って並ぶ本棚は、たとえば、明治・大正・昭和と、その中の書物の時代やテーマがだんだん変わって行くという文脈を表しています。この「街」には、書物があふれ、人が住み、利用者が訪れ、街を散歩し、特定の知識を探し、連想し、インスピレーションを働かせる。そして、この空間は、ブックカフェ、学校、地域文化の拠点、観光ナビゲーションなど、さまざまな現実システムと連動する予定です。

16:00 休憩・パネル設営
16:30 パネルディスカッション
    司会:水谷 長志、パネリスト:安斎利洋、前田富士男、丸川雄三、金子郁容
17:30 閉会
18:30  懇親会

講師略歴
安斎利洋(あんざい・としひろ)
略 歴
1956年生まれ。システムアーティスト。1985年ごろからCG作家として活動するかたわら、ペイントシステム「スーパー・タブロー」を開発する。1990年ごろからCGによるコラボレーション「連画プロジェクト」を中村理恵子と開始する。また、プラネタリウム描画環境「マジック・ケプラー」、P2Pペイントシステム「Interwall」など、コラボレーションシステムの技術開発を行う。2000年ごろから、グラフ構造コラボレーション空間「カンブリアンマシン」を開発するとともに、カンブリアンゲームのセッション、ワークショップを多数行っている。「顔ポイエーシス」などのアルゴリズム作品もあり、創作とシステムの関係に、一貫した関心をもっている。

前田富士男(まえだ・ふじお)
略 歴
1944年生。慶應義塾大学工学部管理工学科卒業後、同大学文学部美学美術史学専攻に学士入学。同大学院文学研究科美学美術史学専攻博士課程単位取得退学。神奈川県立近代美術館、ドイツ・ボン大学美術史研究所、北里大学をへて、慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻。現職:慶應義塾大学文学部教授・慶應義塾大学アート・センター所長・日本学術会議会員。専門領域:西洋近代美術史・芸術学。著訳書に『朝日美術館・パウル・クレー』(編著、朝日新聞社、1995)。『ゲーテ・色彩論(完訳版)』(共訳、工作舎、1999)。『伝統と象徴──美術史のマトリックス』(編著、沖積舎、2003)ほか。

丸川雄三(まるかわ・ゆうぞう)
略 歴
2003年東京工業大学大学院計算工学専攻博士課程修了,博士(工学).学生時代の専門は遺跡探査.その後,特許検索にかかる情報処理技術の研究開発を経て,現在は主に文化財情報発信技術の研究開発に従事.文化庁文化遺産オンラインへの技術協力など,連想の情報学を生かした新しいサービスの実現に力を入れている.

金子郁容(かねこ・いくよう)
略 歴
1948年東京都生まれ。慶應義塾大学工学部卒。スタンフォード大学Ph.D.(工学博士号)。ウィスコンシン大学経営工学科、計算機学科併任準教授をつとめるなど、アメリカ、ヨーロッパで12年間過ごし帰国。エッセン大学(西ドイツ)客員教授、統計数理研究所客員教授などを歴任。一橋大学商学部教授を経て94年4月より現職。99年4月から2002年9月まで、慶應義塾幼稚舎長兼任。専門は情報組織論、ネットワーク論、コミュニティ論。ボランタリーな組織原理とコミュニティ・ソリューションの可能性を探ることに関心がある。ソーシャルイノベーションにも注目している。教育改革国民会議委員となったことが契機となり、近年は、初等中等教育システムに関心をもつ。地域コミュニティが作り、運営する新しいタイプの学校である『コミュニティ・スクール』を2000年に提案し、その後、総合規制改革会議等を通じて法制化を推進する。2005年度の法制化後、各地でコミュニティ・スクールの立ち上げや運営の支援をしている。長野県教育委員(2006年11月まで)、文科省バウチャー研究会委員、文科省学校評価システム研究会委員、構造改革特区評価委員教育部会長、総務省「ネット利用の安全と未来推進会議」主査、総務省「次世代ネットアークアーキテクチャー検討会委員」、など。主な著書『ネットワーク組織論』(岩波書店 共著)、『ボランティア もうひとつの情報社会』(岩波新書)、『ボランタリー経済の誕生』(実業の日本社 共著)、『新版 コミュニティ・ソリューション ボランタリーな問題解決にむけて』(岩波書店)他多数。

6月24日(日)
10:00- 研修室 講堂
公募研究発表会[JADS第54回研究会]

10:00-10:30 「デジタルアーカイブの公開と活用―教育普及活動へのデジタルアーカイブの活用と課題
         奥本素子(総合研究大学院大学)

10:30-11:00 「展覧会カタログに関する言説の系譜的研究の試み」
         長屋俊(2006年東近美インターン・独立行政法人日本原子力研究開発機構)
         吉川恵子(2006年東近美インターン・慶應義塾大学大学院)
         水谷長志(独立行政法人国立美術館)

11:00-11:30 「日本の美術雑誌―永遠の経過報告」
         森仁史(山鬼文庫)
         堀越洋一郎(武蔵野美術大学)

11:30-12:00 「アート・ドキュメンテーションの教育と研修−大学院レベルでの現職研修の可能性を求めて」
         波多野宏之(駿河台大学)

12:15- 第18回(2007年度)総会 研修室
     ・2006年度事業報告、会計報告、監査報告
     ・2007-2008年度役員選出
     ・2007年度事業計画、予算案 ・会則改正について
     ・事務局の移転について
     ・「第1回野上紘子記念アート・ドキュメンテーション学会賞・推進賞」授賞式

14:30- 国立新美術館情報資料関連施設見学会[JADS第39回見学会]
公募研究発表会、総会が開かれる研修室AB(3階)から竹林のルーフガーデン越しに対するのが今年、1月21日に開室した国立新美術館のアートライブラリです。 開架の閲覧室には約1万冊の美術書と展覧会カタログ、新着雑誌が置かれています。建築・デザイン・写真専用の小部屋もあります。 美術館本体と政策研究大学院大学との間にはさまれて、別館があります。その地下1階(閉架書庫)、1階(展示・閲覧室)、2階(資料整理室)もまた、国立新美術館の情報資料提供事業のための施設になっています。政研大の側からでなければ分からないのですが、この別館は、旧歩兵第三聯隊兵舎、戦後は東京大学生産技術研究所として使われていた建物の一画を保存したものです。 二手に分かれて、アートライブラリと別館のそれぞれを見学していただきます。


独立行政法人国立美術館 国立新美術館
http://www.nact.jp
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2 >google map
東京メトロ千代田線乃木坂駅6出口(美術館直結)
東京メトロ日比谷線六本木駅 4a出口から徒歩5分
都営地下鉄大江戸線六本木駅 7出口から徒歩4分

【詳細および申込み】
アート・ドキュメンテーション学会 http://www.jads.org/  参加費:資料代 1,000円(会員は無料)
6/15までにお申し込み下さい  >>参加申込